2013年7月10日(水)にIFHD労働組合セミナー(2013年 第5回)を開催しました。
2013年の第5回は、立正大学経済学部 教授 戎野淑子氏とIFHD事務局長村杉靖男氏(元味の素労働組合中央執行委員長)に、「グループ労連の役割と課題」についてご報告いただきました。
経営側のグループ経営や持株会社化にともなって、労使関係をどう構築するのかが課題になっています。
戎野氏と村杉氏は、ここ数年、実態調査を積み重ねてこられました。その調査から得られた知見と今後の労働組合の課題について問題提起をいただきました。
議論の中で論点になったのは次の通りです。
Q.1 労働組合は、なぜグループ経営に十分に対応できなかったのか
Q.2 グループの労使関係をつくっていくにはどうすればいいか
Q.3 持株会社に労働組合はどう対応していけばいいのか
Q.1については、労働組合が企業別に組織されていることの限界が指摘されました。会計制度の変更により、2000年3月期決算から連結決算が義務づけられるようになり、企業側はグループ経営を明確に意識するようになりました。労働組合も、連結決算の対象となっている企業の労働組合をグループ労連のもとに結集し、経営側に対抗しようとしました。しかし、それらの企業の中には労働組合がない会社もあり、経営側と同じような結束力を示せませんでした。企業別に労働組合を組織するという、日本の労使関係の基本原則が、グループとしての労使関係構築に合っていなかったと言わざるをえません。
Q.2については、やはり、グループの中核企業の役割が重要です。グループ経営を指揮しているのが中核企業ですから、その企業の労働組合がグループ全体のことを話し合うのは自然です。ただ、そこには限界があります。グループ労連または労協という組織が、ヒトとカネをどこまで握って主体的に行動するかは、企業によって異なるというのが実態だそうです。
Q.3については、経営側の協力なしには成り立たないという認識で一致しました。持株会社の下にぶら下がっている企業の経営者は、当事者能力を持たない場合があります。労使交渉において結論を引き出そうとしても「持株会社の意向を確かめないと…」という発言が出ることがあります。持株会社形態を取りながらしっかりした労使関係を築いているのがヤマトホールディングスです。経営側が意識的に労使関係構築をしないと、難しいという意見で一致しました。
経営側は、今後ますます、グループ化や持株会社化を進めていくと思われます。それに十分対応できるような労働組合になっていくにはどうすればいいか、私たちも引き続き考えていきたいと思います。
開催場所:法政大学新一口坂校舎 教室
時間:18:30~20:30
NPO IFHD 事務局